猫のマリア様～白薔薇さまの猫～

　──リリアンには、マリア様が二人いる。

　いつの頃からか、誰が言い出したのかは定かではないが、ある時期、そう言われていたことは確かである。
　背の高い校門から延びる銀杏並木の突き当たり、通称『マリア様のお庭』に佇む白亜のマリア像と、普段はお聖堂に在し、たまに講堂へもいらっしゃる総天然色のマリア像で、合計二人──というわけではない。
　いつも生徒を見守ってくださっているマリア様は、見上げるとそこにある青い空を含めて、お一人と数える。

　そして、もう一人は。
　リリアン女学園に集う乙女たちと見分けがつかない、自身も迷える子羊の一人でありながら、とある迷える者（？）をお救いになる。

　その名を『猫のマリア様』という──。