黄薔薇流入学式


「本日は私のリリアン女学院高等部入学のお祝い、本当にありがとうございます。
 これもひとえに、令様の勉学のご指導があればこそと思います。
 ほんとうにご協力ありがとうございました。」

そうして、内輪だけの歓迎会が始まった。


久しぶりに、由姉ぇと同じ学校に通うことができる。
昔は、そう、体が弱かったころの由姉ぇとは学校から帰ってからしか一緒に遊べなかった。
手術後、元気になってからは、そういう時間がだんだんと減ってきてしまった。
もっとも、黄薔薇のつぼみと剣道部を掛け持ちしていたんだからしかたがない。

だから、今年いっぱい、一年限りだけど、
一緒の学校に通えることになるのは、待ち望んでいたことだ。


「歌乃?私のおかげって一言もいわないのはなにか理由が?
 あとで、どうなるか、わかっているでしょうねぇ?」

うわ、由姉ぇ、笑ってはいるけど、口元が引きつっている。
本気だ。

「落ち着いてください、お姉さま。
 悔しいですけれども、私も、お姉さまも他人に何かを教えるのは苦手としています。
 それに、歌乃ちゃんを冬休みのとき、散々遊びにつき合わせていたのは
 どなたでしたっけ?」

渡りに船、後一歩で噴火しそうになった爆発を抑えたのは
由姉ぇの「妹」である、松平瞳子さま。


最初紹介されたときはびっくりしたけど、今ではもう一緒にいることに違和感はない。
ただ、由姉ぇが二人に増えたような気がするのですけどね。
令さまに以前そんなことを質問したら、ただ、笑っていただけだっけ。


そんなこんなで、宴会は続いて・・・

「そうそう、私、歌乃ちゃんに、プレゼントがあるんですのよ。」
と、改まって私の目の前にやってくる瞳子さま。
いったいなんだろう?

手元に渡されたのは、綺麗にラッピングされた細長い箱?

「今、あけてしまってもよろしいでしょうか?」

なんとなく中身が気になってしまうので、思わず口に出してしまう。

「是非」

「そうそう、大事に受け取ってね?返却は当然なし」
とは、由姉ぇ。

プレゼントって返却するものじゃないとは思うけど、
なぜ、それを言うのが、瞳子さまじゃないんだろう?
なにか引っかかる。

ま、いくらなんでも、びっくり箱ではないだろうし、と
ゆっくり開いてみたら、その中にあったのは・・・


「ロ、ロザリオ?」

えーと、これって、昔、令さまがつけていて、由姉ぇに受け継がれて、
たしかつい先日までは瞳子さまの首にあった、あの、黄薔薇のロザリオ?

「あの、その、これ?」

日本語がうまく使えなくなってしまったではないですか。

「ほら、歌乃ちゃんって、かわいいし、優秀だし、きっと誰かの妹になっちゃうと思ったから。」
とは令様。

「だから、みんなで相談して」
「誰かの妹になる前に、私たちのモノにしておくのが最良と判断したの。」

あの、私の意思はどこにいくのでしょう。
それで、由姉ぇが、「返却は許さない」って言ったのか。


「歌乃ちゃん、私の妹になるの、嫌なの?」
そ、そんな涙顔で迫らないで下さい。
本気なのか演技なのかわからないくらいの涙目されても困ります。

「ああ、せっかく、歌乃ちゃんの「おばあちゃん」になれるのにぃ。」

うう、両方から攻められるし。
この二人の強引さに勝てない私。

落ち着いて考えてみる。
私は、誰を姉に選ぶつもりだったのだろうか。
誰の妹になら、なりたかったのだろうか。
今、目の前にいる人は、私のことを十分に理解していることに違いない。
そして、私もまた、この人達以上に親しい先輩を持とうだなんて、考えたことすらない。

だから、私の口から出たのは、

「私なんかでいいんですか?」

最後の確認。
どうしても、はっきりと言ってほしいことが、あるから。

「何言ってるの。みんな貴女のことは十分知っているし、その上での決断なんですからね。」

「わかりました。謹んでお受けいたします。」


そうして、私たちの入学式の一日は終わったのだった。
入学式の日に贈呈するのは黄薔薇らしいと、瞳子さまからこっそり告げられた。
あ、今度からは、お姉さま、て呼ばないと怒られそう。


fin.



 またまた、へるつさまより、可愛いお話を頂いてしまいました。

 しかも、なんと拙作“
Heaven's Gate”の二次モノ!
 なんだか、わたし、勘違いしちゃいそうです(笑)。

 このお話の感想は、へるつさまのサイト“マリア様には見せられない”まで。
 次のお話も頂けるよう、ガンガンと感想ラッシュを、よろしくです。