出会い


「あ~~~っ、もう、なんなの此処は」
そう言って私は桜の木を殴りつけた。入る前からお嬢の学校だってことは聞いてたけどありえない。
「だいたい、少し収入が良くなったからって見栄の為だけに娘をこんなところに入れんなって」
こんなことならプライドなんて捨ててでも入試を白紙で出せばよかった。やっぱり親は腐っても親なんだ。一番私の性格を理解している。私は何もしなくても人並み以上に物事をこなせた。だから『出来ないの』と挑発されると出来るのに出来ないとおもわれるのが悔しくてすぐに乗ってしまう。そのことがわかっていても変えられるものじゃないし、学校なんてどこでもいっしょだとおもっていたからプライドを優先して此処に入った。
『バキッ』
「きゃ~~っ」
「えっ」
なに?何が起こったの?
「ごめんなさい」
「えっ」
「木から落ちてしまったの。ごめんなさいね。それではごきげんよう」
どうやら木の上から人が落ちてきたらしい。
「ちょっと、待ちなよ。」
「なにか?」
「ひとの上に落ちといてナチュラルに去ろうとすんじゃねえよ」
「だから、謝罪をしたでしょ」
「あんな気持ちの入ってないような言葉で納得できるか」
「じゃあ、土下座でもすれば納得するのかしら?」
「なっ」
「もうすぐ五時間目の授業が始まるわ。あなたも戻った方がいいんじゃないの。それではごきげんよう」


放課後、私はあの女がもしかしたらまたあの桜の木の所にいるかもしれないと考えて桜の木の下に向かった。
「あの女にはしっかり謝ってもらわないと気がすまない」
「きゃっ」
またか、今度は曲がり角で誰かとぶつかった。
「ごっごめんなさい。私、急いでて」
「いいよ。私も悪いんだから」
あれ?なんだかこいつの声って
「あっおまえ」
「?」
「今度はちゃんと謝るんだな」
「あっ、もしかしてあなたがお昼休みに桜の木の所であった人?」
「なんで疑問系で尋ねてくんだよ。そうだよ。私は」
「ごめんなさい。あの時は少し寝ぼけてたの」
「そっそうなんだ」
「ちゃんと謝れてよかったわ。そう言えばさっき何か言いかけてなかった?」
なんだか拍子抜け。別のやつに謝られてる気がする。
「ううん、なんでもないから。それよりそっちこそ急いでたんじゃないの?」
「あなたを探していたから急いでいたの。だからもういいの」
「そう。それじゃあ」
「まって、あなた受験組?」
「そうだけど?」
「此処での挨拶は『ごきげんよう』よ」
「そうなんだ」
「ええ、それではごきげんよう」
「ごきげんよう」
なんだったんだろ・・・



・・・それから数日後・・・

なぜかまたあの桜の木の所に来てしまった。今まで誰かのことを気にしたことなんてなかったのに何故か気になってしまったからだ。
「もうわざわざ人を挑発するような言い方しないでよ」
あの木の方から声が聞こえてきた。
「凄くあせったんだから」
この声はあいつの声だってわかったけど誰かと話しているみたいだったので隠れてみることにした。
「休日は出来る限り変わってあげてるんだから」
なんだろ。一人分の声しか聞こえてこない。
「誰?」
「えっ」
気付かれた。どうしよう、このまま隠れとおすか、開き直って出るか。別に出てったって問題ないだろう。
「よっ」
「あなた、この前の」
「そう。別に用はなかったんだけどふらふらしてたら話し声が聞こえたからこっちへ来てみたんだ。誰かと話してたの?」
「いいえ、ここには私しかいないわ」
「なあ、休日変わるとか言ってたけど、お前の独り言?」
「聞いてたの」
なんだか雰囲気が変わった。はじめてあった時みたいな感じがする。
「聞いてたってわけじゃなくて聞こえたんだよ」
「それで何を聞いたの」
「挑発とかあせったとか変わるって」
「そう、ならいいわここに用がないのならさっさとどこかに行きなさい」
やっぱこいつあの時のやつだ。
「お前、双子かなんかか知らないけどなにそっくりさんに謝らせてんだよ」
「双子?そんなの私にはいないわよ。他の生徒に聞いて御覧なさいよ、私には双子もいないし、そっくりな人だっていないわよ」
「じゃあ、お前が謝ったってのか。信じらんないね」
「別に信じてもらわなくてもかまわな」
「もうやめて」
「えっ」
突然こいつの言葉が途切れて別の言葉が出てきた。
「本当のことを話すからもう喧嘩しなしで」
また雰囲気が変わった。
「本当のこと?」
「うん。私について。信じられないかも知れないけど私、多重人格なの」
「えっ」
「さっきまであなたと話していたのがここで本当にあなたと会った方なの」
「じゃあ、廊下で謝ったのがお前?」
「そう。信じてくれるの?」
「信じるよ。ホントに別人みたいだったし。でも、もし嘘だったらゆるさねえ」
「ありがとう。このこと誰にも言わないでね」


「そういや、あいつの名前聞いてないな」
あれからすぐに用があるからってあいつは去っていった。今思えば、やっぱ嘘であの場から逃げ出したのかもな。
でもあいつの顔は嘘ついてるって感じじゃなかった。どっちなんだろ。まあ、来週にはわかるか。
明日は前から欲しかったCDを買いに行く予定だし、そのことはもう忘れて寝ることにした。



「ふぁ~あ」
朝5時。こんな時間に起きるなんて、やっぱ、気にしてたのかな。それに夢にでてくるとは思わなかった。
散歩でもしてあいつのことなんか忘れよう。
まだ4月のこんな時間だから外を出歩いてる人なんか全然いない。私はこの朝の住宅街の雰囲気が好きだ。だから時々、朝早くに起きたら散歩をする。
いつも散歩する時、私はそのときの気分で道を決める。
だからもし、何かが起きても偶然。でも公園に入った時、偶然とは思えないことが起きた。公園にある桜の木の下にあいつがいた。でも今までとはまったく雰囲気が違った。まるで桜の木の精なんじゃないかって思えるぐらい神秘的な雰囲気を漂わせていた。
余りに近寄りがたい雰囲気だったので遠くから見つめることしか出来なかった。そうこうしているうちにあいつはどこかへ行ってしまった。


結局休みの間中あいつのことで頭の中が一杯だった。



休みが明けて、今日は月曜日。
このままあいつのことが気にしてたら、寝れなくなりそうだから今日、気になることを全て聞こう。そう思い私はあいつを探すことにした。
名前もクラスも知らない奴を探すのは思ったよりも大変だった。でも会えると思ったから諦めずに探した。
当てが無くなったので最初に探したあの桜の木の所に向かうと何か騒がしかったので急いで見に行くとあいつが何人かの生徒に囲まれて泣いてた。
「ちょっと、どうしたの」
私はあいつの所に駆け寄った。
「・・・・・・」
周りの奴らはみんな黙り込んでる。
「お前らこいつに何したんだよ」
黙ってるってことはこいつらが何かしたんだ。
「黙ってないで何か言えよ」
「やめて」
後ろからあいつが私の腕を掴みながらそう言った。そこで初めて私は目の前にいる奴を殴ろうとしていたことに気付いた。
「なんでもないの。だからもうやめて。あなたたちももう行って」
「ふんっ」
奴らはここを去ろうとした。でも私は本当に小さな声だったけど聞いた、去ろうとする奴の1人が「いい子ちゃんぶってんじゃないわよ」って言ってるのが、そして気付いた時にはそいつを殴り倒していた。



「何故このような事になったのか説明しなさい」
あの後、私たちはシスターに見つかって生活指導室に連れて来られた。
「この人が突然、琴さんに殴りかかったんです」
「そうです。琴さんは何もしていないのに突然」
私が殴った奴の取り巻きみたいな2人が答えた。ちなみに私が殴った奴は保健室に行った。
「そうなんですか?」
「私が殴った奴の言葉にむかついて殴りました」
もともとこんな場所は私には向いてなかったしちょうどいいや。そう思って言った。
「それでは認めるのですね」
「はい」
「わかりました。皆さん、今日はもう帰りなさい。二階堂さんの処分については後日連絡します」
「はい」


以外にあっさりと帰された。今はあいつと2人で校門に向かって歩いている。中途半端な時間の所為か歩いている生徒はほとんどいない。
「ごめんなさい」
「えっ」
「私のせいでこんなことになって」
「いいよ。私が勝手にやったことだし、それにこの学園辞めたいと思ってたからちょうどいいよ」
「どうして?」
「この学校は私に向いてないから」
それが本心だった。でも何かが心につっかかってる気がした。
「もう会えないかもしれないから名前教えてよ」
「私は室野十六夜。あなたは?」
そう言いながら突然室野は泣き出した。
「ちょっと、どうしたのよ」
私はハンカチを渡しながら言った。
「ごめんなさい。でも、もう会えないなんて言わないで」
「ごめん。もう言わないよ」
「うん」
「明日の朝、またあの桜の所で逢おう」
「うん」
そして校門についた。
「それじゃあ、ごきげんよう」
『ごきげんよう』なんて恥ずかしかったけど言おうと思えばすんなり出て来た。
「まって、まだあなたの名前を聞いてない」
そう言えば名乗ってなかったな。
「私は二階堂和美よ」
「和美さん・・・和美って呼んでもいい?」
「いいよ。だったら、私も十六夜って呼ぶね」
「うん。ごきげんよう、和美」
「ごきげんよう、十六夜」



家に帰るとすでに学園の方から電話が入っていた。どうやら明日の放課後、今日のことについて親と話をするようだ。親に責められたがそんなことはどうでもよかった。私は十六夜のことしか頭に入っていなかった。



翌朝、私は早くあいつに逢いたくていつもより早く家を出た。
「やっぱり私の方が早いよね」
少しだけ、先に来ているかなとも考えたけど、かなり早くに着いたからやっぱり私の方が早かった。
「昨日とは全然顔つきが違うわね」
「誰!!」
そう言いながら私は後ろを振り返ったが誰もいない。
「誰もいない?」
「上よ、上」
十六夜に始めて逢った時、十六夜が登っていた桜の木の上に居るみたいだ。この桜の木は登るとご利益でもあるのだろうか。
「よっと」
「なっ」
桜の木から飛び降りてきた。
「なにそんなに驚いてるのよ。幼稚舎からいる、生粋のリリアン生ならともかくあなた受験組みでしょ?別にこれくらい普通でしょ?」
「そんなわけあるか」
「あれ、そうなの?まあ、そんなことはどうでもいいのよ。それより、あなた自分のことが噂になってるって知ってる?」
「そんなことより、あんた誰よ」
なんかこいつの雰囲気がむかついたから噂のことは気になったけど、あえて別の話に持っていった。
「あんたって、私は仮にも上級生なのよ。もう少し敬語使えないの?」
「あんたが上級生だってことは知らなかったんだよ。知ってたとしても使わなかったけどね」
「なんか刺があるな~。まあ別に敬語なんてどうでもいいけど。私は2年の遠見桜。リリアンの生徒なんだから、ちゃんと桜さまって呼びなさいよ~」
「さま?なんで、さまなんかつけなくちゃなんないのよ」
「リリアンではね、上級生にはさま付けするのが当たり前なのよ。それに同級生には特に中がよかったりしたら別だけど基本的にはさん付けするのよ」
「えっ」
だとしたら昨日、十六夜が私のことを呼び捨てで呼びたいって言ったって事は私の事を特別視してくれてるって事だよね。嬉しい。
「お~い。1人でニヤニヤ笑ってるのは怪しいよ」
不覚にもこいつの存在を忘れてた。
「別に、にやけてなんか」
「まあ、そういうことにしといてあげる」
「なんか、引っかかる言い方」
「まあまあ、落ち着いて。それよりも噂のこと知ってるの?」
「知らない」
「昨日の事なんだけど、一方的にあなたが悪いみたいな噂が広まってるのよ」
「広まってるって、昨日の放課後のことなんだからそんなに広まるわけないじゃない」
「そうでもないわよ。琴さんって運動が出来て、結構運動部に人気あるし、いつも琴さんといっしょにいる、理沙さんと五月さんが積極的に噂を広めてるから」
「あいつが人気あるって?信じられないね」
「琴さんはあなたと違って、世渡り上手だからね」
「それで、あんたはなんで私にわざわざそんなこと教えるわけ?」
「さあね。それじゃ、私はもう行くわ。ごきげんよう」
「ちょっと」
「和美~」
十六夜が来たみたいだ。それであいつも去ったのかな?
「ごきげんよう、十六夜」
「ごきげんよう、和美。ねえ、さっきの人誰?」
「わかんない。桜って名乗ってた気がするけど、どうでもいい人」
「そうなんだ。それにしても早いね」
「早く逢いたかったから」
「私もそう思っていつもより早く出たんだけど、和美の方が早かったみたい」
「うん」


朝、十六夜と逢ってから他愛もない会話をして別れた。十六夜と話していて嫌なことを全部忘れてたけど、教室に入ってから桜って2年生が言ってたことを思い出した。
明らかに私が教室に入った瞬間、周りの雰囲気が変わった。



昼休みに、あの桜の木の下で十六夜とお弁当を食べた。その時だけは私にとって幸せな時間だった。その他の時間はただ私にとって苦痛だった。



放課後になった。校内放送で呼び出されるのもしゃくだったから私はすぐに生活指導室まで行った。やはりというか、親はすでに来ていた。
「それでは、中にお入りください」
シスターがそう言い、従った。


「それでは、まず昨日のことについてお話します」
それで話が始まった。もしここをやめても十六夜には逢える。だから私は適当に返事をしていた。
ちょうど私が殴った所の話をしている最中に狙ってかは知らないが、私が殴った奴とその保護者みたいな奴が入ってきた。
「あなた方がうちの娘に手を上げた生徒の親ですか?いったいどんな躾をしてるんですか」
やっぱり始まった。こいつらが入ってきた瞬間に予想はしたけど、めんどくさいな。
たかが1発殴ったぐらいで何でこんなに大騒ぎになるんだろ。
「ちょっと、聞いてるんですか」
どうやら私に話が振られてたみたい、聞いてなかったし答え様も無いな。
「聞いてなかった、もう1度言ってくれる」
「なっ」
『バチン』
部屋中に響く位大きな音がした。
「ちょっと、そちらのお子さんも躾がなっていないん」
「ストーップ」
そう言いながら入ってきたのは、今朝私に話し掛けてきた桜と名乗った生徒だった。
「火に油を注ぐようなこと言ってどうすんのよ」
「別にそんなつもりで言ったわけじゃないわ」
「まあ、そうでしょうね」
「いきなり部外者が入ってこないでください」
シスターが怒ってる。まあ、普通は怒るよね。
「私は昨日の事件の一部始終を見てました。第三者の視点でお話できます」
「まってください。この人は和美さんと知り合いみたいじゃないですか。和美さんの肩を持つに決まってます」
「私は事件の間録音をしてました。これなら誰がとっても同じです。まずそれを聞いてください」
そう言って、こいつは許可も無く流しだした。



「と、言うわけです」
MDプレイヤーから流れてきたのは十六夜をいじめてるとしかとりようのない内容だった。
「これはどういうことか説明してもらえますか?」
「こんなの知りません」
「そうです。うちの娘がこんな事をする訳がありません」
「いい加減にしなさいよ!」
先輩が叫んで、その場が一気に静まり返った。
「そうやって否定するって事は自分がやってた事が悪い事だって解ってるんでしょ」
「まだ、うちの娘がやったとは言ってないのに、勝手なことを」
「あなたも自分の子供だけは悪い事をしないとでも思ってるんですか?」
「なっあなた、なにさまのつもりなの」
「皆さん、お静かにお願いします」
琴という子の母親も先生の言葉で少しは落ち着いたみたい。
「本当に何も知らないのですね」
「・・・・・・」
「琴、こんなもの知らないんでしょ」
「お母さんは少し静かにしていてください」
「本当です。全部本当のことです」
そう叫ぶように言われた言葉は生活指導室に響き渡った。
「そうですか。わかりました。少し二階堂さんたちは席を外してもらってもかまいませんか?それから遠見さんも残っておくように」
その言葉で私たちは生活指導室を出た。



部屋を出てから私は気になってたことを聞いた。
「なんであんた、あんなの持ってたのよ」
「あのMDのこと?」
「そうよ」
「私さあ、桜って名前でしょ。だから桜の木って好きなんだ。それでたまに桜の木に登って風で揺れる音をMDにとりながら聞いたりもしてるの。で、たまたまあの時MDを録音したまま眠っちゃったのよね」
「それで再生したら入ってたって事?でも始めて会った時、『昨日とは全然顔つきが違うわね』って言ってなかった?」
「あなたの声で起きたのよ、だから少しだけ見てたの」
「そうなんだ。でも黙ってみてるなんて趣味悪」
「仕方ないじゃない。出て行けそうな雰囲気じゃなかったでしょ?」
「まあ、そうだけど」
「それよりも、これからここでの生活きっと大変よ」
「ここでの生活って退学になるに決まってるんだから関係ないでしょ」
「退学?そういわれたの?」
「まだ言われてないけど、殴ってるんだから退学が決まってるようなものでしょ」
「そんな事ないわ。あなた次第よ」
「それは本当なの」
突然母親が口を挟んできた。
「ええ、今はだいぶ甘くなったみたいですからいきなり退学って事はないと思いますよ」
「やったぞ」
「ええ」
それで、うちの親は私たちから離れて二人で何か話し始めた。
「なんで、言い切れんの」
「経験者は語るって事でいいでしょ」
そう言って、もう何も話したくないのか少し距離をとった。



しばらくして生活指導室から泣きながら琴とその母親が出てきて私たちが呼ばれた。
先輩が言った通り退学処分にはならなかったが一週間の自宅謹慎とこれからもしまた何か起こせば退学になる事もあると言われて生活指導室を後にした。
私たちが出た後に先輩が呼ばれた。
私はあの桜の木に行けば十六夜に逢える気がしたから、親に用事があるといって桜の所に向かった。


「あっ和美」
そう言いながら十六夜がこっちに向かって来た。
「どうだったの?」
「停学にはなったけど、退学にはならなかった」
「そう。よかったね」
そう十六夜は安堵の顔をしながら言った。
「でも一週間も逢えないのは寂しいな~」
「だったら私が和美の家に行く。それなら家にいるんだしいいんじゃない?」
「きっと親が許さないよ」
「そうなんだ。じゃあ仕方ないね。でも一週間待てばいつでも逢えるんだから、ね」
「そうだね」
「でも、なんだか凄く時間が掛かったんだね」
「ああ、私が殴った奴が突然入ってきてなんか言ってたら、あの桜って先輩まで入ってきてあの時のことを録音したMDを持ってきたって言ってそれを聞いたりもしたからね」
「あの時?」
「私が殴りかかった時の私が加わる前から最後まで」
「何でそんなものがあるの!」
「桜の木が揺れる音をとってて気付いたら寝ててたまたま入ってたって言ってた」
「そんなことあるんだ」
「もう、暗くなってきたから帰ろっか」
「寂しいとか言ってたのに自分から帰ろなんて言うんだ」
「もうすぐ下校時間だし、一週間経てばいつでも逢えるって言ったの十六夜でしょ」
「そうだね」
校門まで行った時、突然十六夜が
「和美ってA型でしょ」
「そうだけど、なんで?」
「やっぱり」
そう言いながら微笑んだ。
「なんでわかったの?」
「内緒、それじゃあ、ごきげんよう」
「ごきげんよう」
言いながらもう自分の進む方へ(後ろ向きで)向かってしまってたので、ごきげんようとしか返せなかった。



謹慎中の間は何もする事がなく、十六夜のことや、あの先輩の事を考えたり、この一週間の間に授業中でしてそうなところを適当に見たりした。
そして、一週間が過ぎた。


特に約束をした訳じゃないけど、十六夜はきっとあの桜の所に来てくれる。そう思って私は学校に着いてすぐ、桜の所に向かった。
でも、桜の所には十六夜じゃなくてあの先輩がいた。
「ごきげんよう」
「ごきげんよう」
「なんだか、機嫌が悪いみたいね。もしかして低血圧?」
「あんたのせいですよ
「そんなに嫌わなくたっていいじゃない。それに本当は十六夜さんって思ったのに違って不機嫌になったんでしょ」
「だから、あなたのせいって言ったんですけど?」
「まあまあ」
「何かようですか」
「琴さんが自主退学したって事だけ教えとこうと思ってね」
「自主退学?」
「そう、よくは知らないけど多分そのことで火の粉が飛んでくると思ったからとりあえず教えといた方がいいと思ってね。それじゃあ、私はこれで、ごきげんよう」
「えっ」
もしかしてと思って振り向いたら、十六夜がこっちに向かってきていた。
「和美~」
「ごきげんよう、十六夜」
「ごきげんよう」


そして私たちは2人で歩き出だした。



To be or not to be continued



 リリアンは、薔薇さま方だけじゃない。
 いわゆる一般生徒と呼ばれる人たちにだって、素敵な、不思議な、忘れられない出会いというものは、あるんです。
 そんな『出会い』を、内田水夢さまが書いて下さいました。

 十六夜と和美、二人でいれば山百合会なんて関係ない。
 そんな、強烈な出会い、あなたにはありますか? また、ありましたか?
 高校時代のお友達、今でもいますか?
 そんな事が言いたくなるような、続きが非常に気になる作品、どうもありがとうございました。